ベトナムリョコウテビキ「84」に掲載中の、ベトナム人との付き合い方、
ベトナム生活の矛盾などを好き勝手に書いてる、エッセイ(?)「日々是口実」

84掲載が終了につき、掲載分のみ…
続きはマイカ出版より、電子書籍「越南的生活」で!
マイカ出版 :http://www.office-mica.com/bunko/

『84 ハチヨン』 9号 より

まもなく、SEA GAMESが始まる。
何なの、SEA GAMES?素朴な疑問。言葉の響きからして、マリンスポーツのイベントかな、とか思ったりするけれど、実は、South East Asia、東南アジアのスポーツのイベントであり、2年の一度、開催されるらしい。
で、2003年の今年は、ベトナム、ハノイ・ホーチミン両市で開催される。
SEA GAMEは、総合スポーツイベントで、いろんな競技があるけれど、やはり2年の一度開催されるスポーツイベントでTiger Cupというのがある。
Tiger Cupは、サッカーの東南アジアカップで、シンガポールのビール会社「タイガー」が冠スポンサーで、日本で言えば、キリンカップのようなものだけど東南アジアの10ケ国が参加する。

見たことある人は、もう、すっかりおなじみだけど、ベトナムチームが勝つと市民総暴走族になる。
試合のある夕方、街中から、市民が消える。自宅に沢山の人が集まったり、バーや、レストランで、皆がテレビを見ながら、一喜一憂するわけだが、その頃、街中の大きな通りの入り口に、警察の皆さんが、フェンス、柵を準備する。

何故か、僕らも一応に緊張をおぼえ、勝負の行方を見守ったりするのだ。
自分たちが住んでいるせいもあって、ベトナムチームを応援してしまう、ベトナム人はもっと大変だ。テレビに気を取られ、仕事どころじゃない者までいるし、ふと外を見れば、知らない人が、遠くから店内のテレビを見てたりする。

さて、これが準決勝、決勝だとする。ベトナムチームが勝った。そしてゲームが終わって5分もすると、今まで静かだった街に地響きがおこりだす。
 
ベトナムチームはどこまでいくのか?

店の前の通りは、通り抜けできないように封鎖されているので、何ともないが、両脇もグエンフエ、ドンコイ通りを見れば、ビッシリバイクが身動きできないほど詰まっている。皆ベトナムの国旗を振って、顔にペイントして叫んでる。
そのバイクに混じって、横幕を持って行進している若者、一緒になって旗を振ってる外国人、皆楽しそうに歩いてる。

ふと見ると、今は日本に帰国してしまった、ある日系企業のSさんが、ひとりベトナム人に混じって行進してるじゃないか・・・!!
「何やってるんですか・・・?」
「あのね、実はね・・・」

と言ってる間に、人込みに押され行ってしまった。
一時間位して、店に来た、Sさんは「いや〜、冗談で旗を持って見に行ったら拿捕されちゃってさ、参ったよ・・・」とまんざらでもなさそうな顔をして、ビールを飲んでた。

SEA GAMESにも、もちろん、サッカー競技がある。

VNサッカーチームはシンガポール・インドネシア・タイとともに、東南アジア4強と言われている。

『84 ハチヨン』 8号 より

  ここに暮して、5年半となった。
いい加減な英語と、更にいい加減なベトナム語と、日本語が入り混じってのコミニケーションを、ベトナム人としてる訳だけど、これに関しても言いたい事は山ほどある。

例えば、日本に僕らがいて、白人でもアジアの人でもいんだけど「ケイオープラザハ、ドコデスカ?」と変な発音で聞かれても、「ああ、京王プラザね」と分かるものだが、ベトナム人は99%分からない。
で、ベトナム語は発音によって、意味が異なるので、許すとしても、英語まで分からんのだ、しかも間違った発音で・・・・・・。

 こんな事があった。アメリカ人の友人が遊びに来た時に、ベトナム人らとテーブルを囲み食事をしていたら、あるベトナム人が「コンフォー テーブル」という単語を連発していた。よく、足マーサージとか床屋に行くと、みんな使う「コンフォー テーブル」。快適とか、気分がいいと言った意味だけど、友人のアメリカ人は、「No!カンファンタブル」と直すと、
「No no no コンフォー テーブル」と言い返す。
 ちょっと待て、

 この方はアメリカで生まれて、ずっと育っているのだよ、その方に発音、直すのかい!

   結局、最後まで、コンフォー テーブルだった。その他にも、テビリジョン(テレビジョン)、ホピスタル(ホスピタル)など、多くの人が間違ったままおぼえてたりするのだ。でも、多くの人が英語を話せない日本人よりいいか・・・・・・ 。


 私の店、「LUNA」は、気まぐれでつけた名前だけど、ベトナム人から、よく、どういう意味?と聞かれる。
 ベトナム語で「チャン(月)」だよというと、ふ〜んチャン(ライム)かというので、「違うよ、チャン(月)だよ、と上を指差して、言うと、天井を見て、顔を見合わせて、「なんだ、チャン(白)か・・・・・・」と白い天井を見て言った。
 ちなみに、チャンは、「Trang」と書くので、日本人には読めないのも困ったところだ。昔、あるガイドブックに、「ガイドのトラングさんは、親切で・・・・・・」とかいてあった。

 うちの従業員は、日本語を勉強していて、よくいろんな質問を受ける。この前は、「スイマセン、韓国の書き順を教えてください」と言われ、「はっ、書き順?」などと、オロオロしてしまい、「書き順は重要じゃないから・・・・・・」と訳の分からない答をしてしまったのだった。


『84 ハチヨン』 7号 より

  まだ、改装前のTAXデパート。 1階には、小さなスーパーマーケットがありました。 一応、POSシステムのレジで、レジの横は、大人が2人、通れるくらいのスペースがありました。ある日、買い物をしてレジに並んでいると、隣のレジに白人のマダムがレジ前にある、歯磨き粉を見てたら、ベトナム人のわりと、若い女性が追い越して、先に会計をしました。マダムは、真っ赤になって、

「jotyi.gdetyusc !!!」

と何語か分からない言葉で、怒ってるのでした。
まあ、誰が見てもその状況は分かります。割り込みをして会計したのが気に入らない様子。しかも、若い女性よりは、レジのおねえさんに「こんなんのありかよ・・・・・・」と怒って、収まらない様子。 よくあるんだよね、と前を見ると、

「え”〜〜〜」
知らないベトナム人のおばさんが割り込んでる。


 冗談じゃないよ、並んでるだろうが、このタコ助め!! と騒いでみたものの、おばさん、まるで、無視。レジ係は、気の毒そうに、「よそ見してて割り込まれるお前が悪い」と言いたそうな目。いつか聞きたい、知っててそうしてるのか、 まったくボケなのか?
   ある場所のキャッシュディスペンサーでは、白人、私とCDの機械のドアの前に並んでたところ、台湾人とおぼしきおばさんが、ドアを開けて、中に入ろうとするから、2人で注意した。その後、私は、携帯電話が鳴ったので、話をしていたら、別の東南アジア系のおばさんが、中には入ろうとしている。そしたら、さっき注意された、おばさんが、私の方を叩きながら、

「どうして注意しない?」
と不思議な顔をしてる。

「見たらわかんだろう、電話中だよ!」

といった具合である。自分の事は、棚のずいぶん、上の方にあげて。

  エレベーターもそう、頼むよ、降りるのを待ってから乗れよ、待ってから乗れ!

待ってから乗れって言ってんだよ!!

 それから、エスカレーター降りて、すぐ立ち止まるのも止めなさい!!! 係の人、ボッケっとしてないで、注意しなさい!!!!


今回は、怒っているのだ・・・・・・。

『84 ハチヨン』 6号 より

  ベトナムに暮して、あっという間に5年。ここでの生活でかかせないのが、オートバイ。日本でも、遊びようのオフロードバイクと、近所用のスクーターに乗ってたので、迷わず、バイクを買う事にした。何を買おうかと、迷っていたが、2つの大きな問題に気づいた。ひとつは、外国人で免許証がないので(ベトナムは国際免許では不可)原付、いわいる50ccしか乗れない。 もうひとつは、値段が高い!! ちょっと待って、何でこんなに高いの?こんなにとは、みんな、20〜30万円はするわけで中古でも結構、高いのだ。スペーシーなんて、聞いただけで、倒れそうになる値段だった。 という事で、必然的に、買う車種の幅は狭まれ、ベトナム人の従業員とはるか、5区の先まで行って、黒のヴェスパ50ccを200ドルで買ったのだ。ヴェスパと言えば、「工藤ちゃん」※で、知ってる人は知ってるんだけど、高校生の頃、密かな憧れだった。演出とはいえ、煙をモクモク吐いて、すぐ壊れるのだ。実は、その時に僕は結構、嬉しかったのだ。

 何故なら、わりと、カッコイイのだ。小さくて小回りも効きそうだし。左手のギアチェンジもすぐ慣れ、しばらくは、いい気分で乗ってたのだ。ある日、走っていると、急に路地からバイクが出てきた。

「お〜〜〜」 っと叫びながら、ブレーキをかけると、効いたのだが突然、レバーが軽くなった。一応、昔、オフロードの草レースなんかに出てたので、どういう症状か分かった。多分、ブレーキシューが磨り減ってバカになってるのだろう。
 バイク屋に持ってくと、手際よく、分解して言った。
「ありゃ〜、木が折れてる」 ちょっと待て、今何て言った?

「木が何とか・・・・」
と言わなかったか?

「だから、木が折れちゃったんだよ」

「????????」


 ブレーキシューと木の関係が分からなかったが、覗いて見て唖然とした。 つまりこういう事らしい。ブレーキシューというのは外側に広がる事により、摩擦を多くして、タイヤが回らないようにつまり、ブレーキがかかるようにする訳ですが、このヴェスパは既に古く、新品のシューをつけても広がりきらない。だから、最初から広げとく為に薄い木を噛ませてあるのだった。だから、木が壊れると、いくら広がってもブレーキは効かないのだった。

「やいやい、バイク屋、危なくてしょうがね〜じゃないか、エッ!!」
というと、彼はクールにこう言うのだった。
「大丈夫、このバイクは鉄で出来てるから、ぶつかっても壊れない」

 それから、どれくらい乗ったのだろうか。
 ある日、遊びに来ていた、友人K輔と、デブ2人乗りをして、ベンタン市場の前のロータリ−を走行中に、後ろから来た、自転車に追い越されてしまった。何か尋常ではない、ペダルの速さではあったが、その後、すぐにそのヴェスパは、従業員に進呈されるという末路をたどった。

※ 工藤ちゃん:もちろん、松田優作の「探偵物語」の探偵・工藤俊作。岸田 森の怪盗103号とか、バーニー服部、マサコちゃ〜ん、懐かしい。

『84 ハチヨン』 5号 より

 いきなり現れた、ドリル男。なぜか、友人Kは、残念そうに、走り去ってく、 その男の後姿を見送ってるのでした。 そして、ドリル男(正確には、ドリル売り男)に、次に会ったのは、最初に遭遇してから、数日後の夕方でした。「オ〜イ」と遠くから、満面の笑みをたたえ、

「マイフレ〜ン(マイフレンド)飲みに行こうぜ!」

っていつからダチ公なんだ、俺たちゃよ!エッ!!

「分かった、じゃあ、一人で飲みに行くから、ドリル、買ってくれよ・・・・」
相変わらず、訳のわからん事を言ってるので、私は、無視して帰ったのでした。その話を、その日、店でみんなにしてると、 N君が、「え"〜〜〜」と絶叫してます。
「どうした?N君」と聞くと、

「ドリル、欲しかったんですよ〜」

だって、もう倒れそうになった。
「2日前だったら、買ってましたね」ってさ、そういう話をしてるわけじゃないだろうが、青年!!
  これを機に、他の皆さんも、「10個なら買う」とか、「電動ノコ」もつけろとか、勝手な事を言い出したのでした。

  そして、3度目の遭遇。その日、私は自分の店の前で、人と待ち合わせをしてました。でも、既に20分、電話すらありません。そこに、運悪くドリル男が通りすがったのでした。
そして、又例のごとく言ってます。私は「うるさい、あっちけ!!」と言ったら、ドリル男、バイクを降りて近づいて来ました。私の手をとり、「飲みに行こうぜ」と言った瞬間、短い導火線に火がつき、持ってた、ゴルフのスイング練習用の棒を振り回し、

「テメー、ぶっ飛ばしてやる!」

と大声をあげてしまいました。近所の人達が見守る中、男はバイクに乗って、「怒るなよ、怒るなよ」と言ってエンジンをかけようとしてますが、かかりません。私は、走って追っかけて、一言文句を言ってやろう思った時、スタッフの一人に止められたのでした。

「テメー、2度と声かけるんじゃね〜ゾ!」

と日本語で捨て台詞を残して、振り返った時、男は何かを言ってましたが、聞き取れませんでした。

 どう考えても、怪しい、どこかで盗んできたのだろうか?
見ず知らずの人が、「お〜、ドリルだよ、ひとつ買ってみるか」なんて言うんだろうか?少なくとも、N君は言うかも。
そして気になる、お値段はいくらだったんだろうか、などバカな事を考えてるある日、遠くから

「お〜い、ドリル買ってくれよ、ビール飲みにいこうぜ!」


とドリル売りの田中邦衛がバイクで近づいてきた。
しかも、いつもは青の一色のドリルが、黄色やら、赤、と3種類もあったのだ。
  何も言う気がおこらず、静かに空を見上げるのだった。

『84 ハチヨン』 4号 より

 最初に断っておきますが、本当の話です。ある日の朝、早く目覚めた(6時ごろ)私は、カーテンを開き、窓を開けました。

「ん?ん?ん?ん?」


「ヤベー、昨日、飲み過ぎたかな?」、と目を疑いたくなる光景が・・・・・。窓の外を、体長2mはある、真っ黒で、くちばしがオレンジ色で、しかもそのくちばしが頭と同じくらいの大きさの怪鳥が、ゆっくり羽ばたきながら、サイゴン川方面に飛んでいきました。なんとなく、目が合ったような・・・。飛んでいってから、

「うお〜〜〜〜〜、ナンじゃありゃ?何なんだ〜!!!」

と叫ぶのでした。多分、ダムセン公園かどこからか、逃げちゃったんでしょうね。ビックリした〜。

 と、まあ、非現実的な事が、日常生活でおこる、この街での出来事ですが、こんな事もありました。高校生時代からの友人Kが、娘を連れて遊びに来た時の事です。
 僕ら3人は、買い物に出かけました。ある店で、僕は一人で、外でタバコを吸ってたところ、通りの向こうから、作業服を着たおじさんが、バイクに乗ってまっしぐらに歩道にのりあげて来ました。どう見てもその視線は、僕を捕らえており、試しに後ろを振り返っても、誰もいないので、用事があるのは僕だと、確信しました。タバコが、いけないのかな?と思ったのですが、よくみるとそのおじさんもくわえタバコしてる。 おじさんは、悲しそうな目で、訴えるように、手に持った作業袋を差し出し、

「これ、買ってくれよ〜、頼むよ、買ってくれよ〜」(もちろんベトナム語で)

と、まるで、「北の国から」の五郎さんのような口ぶりで言うのであった。更にそのおじさんは、

「ビールが飲みてんだよ、買ってくれよ・・・・」

こいつ、何かヤバイ物を売ってるんじゃないかと、警戒してると、おじさんは、もったいつけるように袋をちょっとだけ開いて、見せた。
「ん?」中に入ってるものは何か、分かったけれど、意味が分からなかった。

「何、これ?」

「だから、これ買ってくれよ、ビールが飲みてえんだよ〜」


袋に入っていたのは、新品で、ビニール袋に包まれた、
「電気ドリル」だった・・・・・

おじさんは、作業服に、ヘルメットまでかぶってた。現場から持ってきたんじゃないのか?とか、考えながら、いずれにしても関わりあうのはよそうと、無視して、目を合わせないようにした。すると、おじさんは、バイクを降りて、店の中に入って行き、友人Kに、同じように

「これ、買ってくれよ〜」


とやってる。ベトナム語の分からないKは、「何、何?」なんて、袋の中をのぞいて、僕を呼んで、「何、これ、ドリルじゃん、どうしたのよ?」と聞いてきた。なるべく、店の中を見ないようにして、「買って欲しいみたいよ、ドリル・・・」と言った。

「は?」

娘も一緒になって、袋の中をのぞいてる。
Kは、「どこの世界に、ただ、街を歩いてる人間に、ドリルなんか売りつけるんだよ」と少し、怒ったように言った。「だから、知らねえよ、俺に聞くなよ!!」と答えたが、おじさんはなおもしつこく、売りつけてる。Kは、わりと、いろんな国を旅してるのだが、ドリルの物売りは初めてだ、面白い所だね、なんて言い出してる。「K、頼むよ、俺だって初めてだよ・・・・」

  あまり、無視したので、おじさんは、バイクで走り去って行ったが、どこの世界に「お〜、ドリルだよ、欲しかったんだよな〜、これ、ラッキー」なんて奴がいるのだろうか?

  その後、飯を食いながら、Kとそのおじさんを思い出し、「バカだね〜」なんて笑い飛ばすのであった。
 しかし、それは、始まりのほんの序曲だったのだ・・・。

『84 ハチヨン』 3号 より

 ああ、今日も暑かったな・・・と思い、夕方、お客さんが来る前にこっそり、冷えたビールを1本だけ飲む、好きな時間。グラスを一気に半分くらい空けたところで、

バギバギバギバギ・・・・・   ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜

何?ナンなの?急いで声のするキッチンに行くと、従業員が固まってる。「ウィ〜ン」とモーターの回る音。従業員 の視線の先を見て、私も固まってしまった。なんと、

扇風機のプロペラが粉々に壊れて散らばってる。

つまり、壁掛けタイプの扇風機の前面の網が外れて、プロペラが凶器のように回りながら飛び出し、粉々になった残骸だったのだ。幸いケガ人はなかったものの、ちょっと、ゾッとする場面である。
何故に、前面の網が外れたのに合わせて、プロペラも一緒に外れたのか偶然にしては、あまりにも怖すぎる出来事でした。ベトナム人の従業員の一人が、ボソッと、

「やっぱり中国製だな・・・」と言った。

 私は、次の言葉が出てこなかった・・・・・・・。  店の2階につつましく私が仕事をするスペースがあって、そこに小さな扇風機を買おうと思い国営デパートへと行った。小さいタイプのが見つかったので、早速試してみた。ボタンは3つ。0・1・2と番号がふってあったのだが、まずは、「1」を押してみた。扇風機はゆっくりと回り出した。
 ちょっと、音がうるさいような気がしたが、サイズも値段も手頃なので、買おうかと思い、試しに「2」をおしてみた。

「??????」


もう一度、「1」を押す。

「ん?」
交互に何度もボタンを押したけど、プロペラの回転速度は一向に変らない。店の店員に 「何これ?」 と聞くと、 「おかしいな?」 と言いながら何度も交互に押してる。
そのうち、あきらめて違うのを店の奥から出してきて、試してみると、若干だが「2」の方が強かった。私は、120,000ドンを100,000ドンにまけてもらって、その扇風機を買った。
仕事場に着いて、早速扇風機を出して、コンセントを差しこみ、ボタンを押すと、扇風機は回りだすのだけど、指を離すと止まってしまう。
要するに、ボタンのロックが効かないのだ。国営デパートから、徒歩2分、たったそれだけで、壊れてしまうのか、え〜、この扇風機は?すぐに、国営デパートまで戻って、状況を説明すると、店員が

「お客さん、これ、中国製なんですよ・・・・」
お〜、なんてこった、又かよ〜〜〜〜〜〜〜。

その後、いろんな人から話を聞くと、警察の方々が、オートバイのヘルメットを無作為に選んで強度実験をしたら、中国製のヘルメットは全部、壊れたとか、買ったばかりの冷蔵庫が全然冷えないとか、聞く度に、ベトナム人の皆さんから

「やっぱり、中国製は使えないな!」

という意見を聞くのであった。私は、寡黙になって、言葉を失ってしまうのであった。

『84 ハチヨン』 2号 より

ベトナムに暮らして、4年たった。自分の中で、ベトナム生活で培った事は、会話とは即ち議論だということ。これを侮ると自分にとっていい結果にはならないということ。議論が真剣に出来ない場合、殆どその場に流されるだけ。いわゆる負けになるのだ。
 例えば、買い物。よく行く店では、一切値切らない。初めて行く店でも、ベトナム語で「いくら?」なんて聞いて、高い場合は「高いな〜」と言っても、あちらに安くする気がないと分かると、言い値で買う。
 この前も、たまたま、ミネラルウォーターを街で買ったら、5000ドンと言った。(1000ドン≒9円/2002-2月)コカコーラが、2000ドンというポスターが貼ってあって
「コーラが2000ドンなのに水は5000か?」と聞いたら、

「今はテト(旧正月)だから・・・」

だそうである。反論の文句が見つからない。

 友人が来たので、エアポートに迎えに行く。
夜、雨が降っている。街中まで、エアポートタクシーで行こうとすると、「7ドルだよ!」と言う。7ドルは、105,000ドン。来る時は、60,000ドンで来た。別のタクシーに乗ろうとしたら、「10ドルなら行くよ」と言う。

「ちょっと、メーターついてるでしょうに!!」

「だから、10ドルなら行くよ」

こういう場合、こっちの方が立場が弱い。なぜなら、エアポート内で、夜遅いこの時間、他にタクシーをつかまえられないからである。

「ねえ、来る時は、60,000ドン、4ドルだよ、どーして、10ドルなの!」

「夜でしょ、オーバーワーク、しかも、雨ジャン」


「遅くまでオーバーワークご苦労さま、しかも雨なのに、大変ですね」

 結局、先に話しかけた、7ドルのタクシーに乗った。7ドルの運ちゃんは、

「お前はラッキーだよ、今日なんか、みんな、10ドルは言うぞ・・・。」

そう、まともに彼らと議論すると本当にエネルギーが要るという事を、この4年で知った。でも、相変わらず、腑に落ちないのだ。

友人も言ってた、「お前はオコリンボだもんな・・・」「俺はね、不条理な事が腑に落ちないの、わかる?」

 こんな事もある。従業員(42歳女性)が、よく休む。理由を聞くと 「息子が病気だから・・・」

「ねえ、おばちゃん、息子何歳?」

「16歳」

「病気は何なの?」

「頭が痛いと言ってる」

「16歳で、頭痛いくらいで、一人で病院も行けないの?え〜、だいたい、なんで、息子が病気なのに、おばちゃんが休むんだよ!!!!」

 しかも、一人じゃない、ウエイトレスが「母が病気だから、休ませてくれ・・・」給料日の翌日、「突然、田舎に帰る事になったので、辞めます」もう、感動の理由のオンパレード。

 ある日本人学校で、一人のベトナム人の守衛さんに
「明日から、庭の水撒きをして下さい。50,000ドン給料増やしますから」「分かりました」と言い、1週間は水撒きをする。ところが彼は

「水撒き、大変だから、水撒きの仕事は辞めたい・・・」

「ああ、そうなの、じゃあ、50,000ドンは払えないですね」

「どうしてですか?あなたは給料を増やすと約束したじゃないですか?」


「ですから、水撒き代が50,000ドン、それをしないから払えないんですね」

「あなた、私を騙したんですね・・・・」

「・・・・・・」


こんな人が多いのである。すべてがそうとは言わないけれど・・・。だから冒頭のように値切りで使うエネルギーを虚しいと感じてしまうのである。口では勝てない。
 多分、そんなパワーで、中国・フランス・アメリカ等世界の大国との戦争を耐え抜いて来たんじゃないかと、思う。

 
 
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